11月 校長室より
友と共に交わす日々
校 長 渡 邉 現
咳をしても一人
有名な句だということ、後から知りました。
(言葉は 心を 越えない…)と切なく歌う歌謡曲もありますが、こんなに短い言葉だけれども言葉とは心を表すものなんだなと思いました。そういえば、石川啄木の句「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて蟹とたはむる」を学校で習った時には、「蟹とたわむるって言ったって、この句は楽しい情景を表してはいませんよ。」と先生に問われて「そりゃそうだろう。わかります。」と思ったことも、思い出します。悲しい、とか、さびしい、とか、孤独、とかの語句では到底表せない感情にも、豊かな言葉を使えば、発信者と受信者の言葉の理解によって心とは伝わり合うことができるものなのだろうと思いました。
今年も10月27日から11月9日までの期間(文化の日を中心にした2週間)は「読書週間」でした。後期の中学校の図書室では、文化専門委員会が企画して読書の推進活動を行っています。「お気に入りの本についてコメント付き動画で紹介する」のよう。お気に入りの本を紹介するということは照れくさいことかもしれませんが、本の良さだけで留まらず、紹介しているその人のことまでももっと知ることができそうで、企画実行のその日の来るのがとても楽しみです。
<公正 きれいな学校>
積極的で気持ちのいいあいさつ /きれいな清掃活動 /整った朝学習 /気持ちのよい歌声
<明朗 安全・安心で明るい学校>
全員が平等で笑顔 /安心できる休み時間 /居心地のいい図書室 /全員が聞いていて楽しい放送
<剛健 発揮する学校>
いじめ撲滅集会を成功させる /よさをどんどん出していく /5分前行動でよさを持続する
これらは、生徒会三役の皆さんが学校経営方針を自分たちの言葉にして表してくれたものです。
本を読まない、新聞離れ、などともいわれます。しかし「実は、今の若者こそ活字が生活の一部として欠かせない日々を過ごしている」とも聞きます。
会話よりも、電話よりも、SNSでの短い言葉での頻繁なやり取りを有効に活用して毎日を過ごしている―――。確かに、です。そして、そんな生活様式は、もはや若者に限ったことではないような気も、します。
闇バイトや薬物利用を誘う言葉が仕掛けられ人を傷つける言葉ばかりで展開されるSNS。やさしい言葉や当たり障りのない言葉、承認欲求の言葉ばかりで埋め尽くされるSNS。そして、知らぬ間に、気づかぬ間にそっと忍び寄られて誘いに乗せられてしまう罠。
学校では、お互いに言葉を交わします。相談もするし励まし合ったり喜び合ったりもします。授業では、日々、教科のそれぞれで新たな言葉を獲得します。
「咳をしても一人」。そんな学校には、絶対にあってはなりません。